吉川英梨『私の離婚に関する予言0』

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私の結婚に関する予言0 私の結婚に関する予言0

ごあいさつ

全国の、いや全世界(?)の平沢里香ファンのみなさま!
お待たせしました! (待ってない? いやそんなこと言わずに)
いよいよ『私の予言シリーズ』第二弾が始まります!!
その名も『私の離婚に関する予言0』です!!!

改めまして、作者の吉川英梨です。
お久しぶりの方もはじめましての方も、読者の皆様がこの作品をドキドキわくわくしながら楽しんでいただけることを心より願っております。

今回もこのシリーズのメインキャラクター、平沢里香ならびに早瀬隆二が、私のポンコツな頭の中でがんばって動いてくれました。
すっかりキャラ立ちしてしまった二人は、今回も作者である私の意図に反して何度も暴走を繰り返し、ストーリーの流れが変わってしまうのではないかと執筆のたびに冷や汗ものでしたが(笑)、そんな二人がボロボロになりながらも必死に大切なものを守ろうとする姿を、一緒に手に汗握りながらご覧になっていただきたいと思っております。

前作、某国のスパイなどトンデモキャラが登場してひいてしまった読者の皆様、ご安心ください! もっとすごいトンデモキャラが新たに登場し、主人公をぶんぶん振り回していきます(笑)

現実にはありえない人物、設定、建物、出来事、etc・・・のオンパレードですが、「物語だから」と大目に見て、一つのエンタメ作品として楽しんでいただければと思います。

それでは、平沢里香の大冒険・第二幕、はじまりはじまり~!
# by eri_yoshikawa | 2009-09-02 21:28 | ごあいさつ | Comments(14)

あとがき~ありがとうございました~

 読者のみなさま

 作者でございます。

 このたび、無事「私の離婚に関する予言0」のweb連載を終了
することができました。
 ご関係者の方々ならびに読者の皆様には、心よりお礼申し上げ
ます。

 さて。
 前作の「私の結婚に関する予言38」の時と同様、
またしても”おわり(つづく?)”という形でピリオドを打た
せていただき、「何この終わり方!?」
とすかしっぺを食らったように思った方もいらっしゃるのでは
・・・。(主人公ともども、下品な表現でスイマセン)

 もちろん・・・!! 里香&リュウのお話はここでは終わりで
はありません!!
 主人公級のキャラを死亡させるなんて、こういったエンタメ系
小説ではありえないオチですが、ももももちん・・・!!
リュウの死に関して、実は裏で大仕掛けがあり・・・。

 一体二人の恋の結末がどうなるのか、
今後また何らかの形で、みなさまにお披露目することが
できる日が来るかと思います。
 それまでしばしお待ちいただきたいと思っております。

 重ねまして、執筆、そして連載に関しましてたくさんのかたが
たに奔走していただき、はたまたたくさんの助言をいただきま
した。心より感謝しております。
 そして最後まで手に汗にぎり読んでくださった読者の皆様、
本当にありがとうございました。

 また近いうちにお会いできる日が来ること、そして里香&リュ
ウの本当の結末をお披露目できる日が来ることを、
心から願っております。

                             吉川英梨
# by eri_yoshikawa | 2008-12-26 09:02 | ~ありがとうございました~ | Comments(19)

#010~6 新生ソリューションアイ誕生! 永遠のわかれ


 会場の株主たちがそう叫び、場内が大混乱に陥った。



 そして次の瞬間、異様な沈黙が、神がかり的な沈黙が、2000人キャパの大ホールを、包み込んだ。


 私は、着地していた。


 スピーチ台の上に、着地していた。

 アフリカチームの軍事訓練が、またもして、こんなところで役に立つとは。


 私の革靴の下に、私がこれから読むはずだった、30ページにも及ぶスピーチ原稿が準備されていた。

 顔を上げた。

 ソリューションアイを資金面で支える株主たちが、あっけに取られ、呆然と立ち尽くしている。

 ど、どど、どうしよう・・・。

 こうなったら・・・。


 開き直るしかない!


 私はそのまま、スピーチ台の上に、私のスピーチ原稿の上に、すっくと立ち上がった。

 珍獣を右手に抱いたまま。

「た、ただいま紹介にあずかりました、新会長に任命されました、平沢里香です!」

 会場が一瞬、鉛を呑んだように沈黙した、そのとき。

 誰かが手を叩き、黄色い歓声をあげて笑いながら叫んだ。




「リカティ、かっこいい! 最高! キャー!」


 なんと! 一ヶ月前にやっと武装勢力から解放されたミキだった。ちゃっかり客席の最前列に座り、ちょっと大きくなったおなかを見せながら、子供のように瞳を輝かせ、きゃっきゃきゃっきゃと騒いでいる。


 彼女は、全然理解していない。この会場のしらけきった空気を、全然、理解していない。


 しかし・・・。意外なことが起こった。


「さすが! リュウジ・ハヤセが指名した後継者だ! 天上から登場とは、なかなかこった演出をするもんだ!」


 また別の誰かが、叫ぶ。

「そうだ! 彼女こそが、天国のリュウジ・ハヤセが遣わしたソリューションアイの未来を担った天使だ! 女神だ!」



 そんなような声があちらこちらで飛び交い、会場の拍手が一体となって、新会長に指名された私を包み込んだ。



 後ろを振り返った。



 ジミーと佐々木君が、やれやれと頭をかき、肩をすくめている。



 後ろの座席に座っていた米アイロン社の代表たちも、あきれた様子で私や株主たちを見つめている。


 そして私ににっこりと微笑みかけ、黙って舞台下手に下がる、ドクターコフィン。


 舞台上手を見ると、カーテンの陰でにんまりと笑ってこちらを眺めている、リュウのお父さんの姿が見えた。


 決議をするまでもなかった。


 客席を埋め尽くす株主たちの、満場一致の拍手が私の全身を包み込む。


 さあ。平沢里香。


 私の肩に、これまで以上に大きな使命がのしかかった。


 ソリューションアイ会長・平沢里香。


 世界五カ国をまたにかける、多国籍コングロマリット企業の会長に、私はたった今、就任したのだ。


 それでも、その肩書きは、全然重たくなんてなかった。


 だって、一緒に支えてくれる人がいる。


 その重さを、半分こずつ、わかちあってくれる人がいる。


 瞳を閉じた。リュウの姿がくっきりと、浮かびあがる。

 195センチのすらりとした長身。仕立ての良いダークスーツ。黒い大きな瞳は、大洋に注ぎ、私をいつでも、どんなときでも、暖かく包み込んでくれる。

 リュウ。そこにいるんでしょ。


 わかってる。


 さあ、私。

 行くぞ。新しい未来が、私を待ち構えている。



行け! 
多国籍コングロマリット企業・ソリューションアイ会長・平沢里香!



                                おわり(つづく?)
# by eri_yoshikawa | 2008-12-25 09:13 | #010~6 | Comments(3)

#010~5 新生ソリューションアイ誕生! 永遠のわかれ


 私はとっさに駆け寄り、アニ子をスライディングキャッチしていた。


「それでは、故リュウジ・ハヤセ氏がじきじきに指名したソリューションアイ後継者であるリカ・ヒラサワをご紹介いたします。私は残念ながら米アイロン社からの指名を辞退させていただき、ミス・リカ・ヒラサワをソリューションアイ新会長として迎え、支持したく思っております」


 ドクターコフィンの声が、鉄骨の下から聞こえてきた。それを脳裏で受け止めながら、私はアニルを右手に掴みあげた。




 ナイスキャッチ!


 ・・・だったはずが。幅10センチの鉄骨の上でバランスを崩した私。足がすべり、梁と梁の隙間に片足が落ちる。反対側の足をふんばろうとして、こちらも鉄骨の上をすり抜け、反対側の隙間に足が落ちる。そして私は、鉄骨で股間を強打した。


「痛い!」


 なんて叫んでいる暇はなかった。バランスを崩し、アニ子を手に持った右側に体が傾き、私の肩が、上半身が、下半身が、そして私の全身全てが、鉄骨と鉄骨の隙間に落ちていく。


 私の出番を待つ舞台の上に、体が、落ちていく。



 落ちる・・・!



 わらをも掴む思いでさし伸ばした手に、冷たい鉄骨があたった。


 それを掴む。思い切り掴む。必死で、掴む。

 左肩に激痛が走った。



 思い出した。忘れていたなんてバカだ。

 私は一ヶ月前、左肩に銃弾を受ける重傷を負ったのだ。もうコルセットも包帯も取れているが、傷が完治しているわけではない。




 痛い、痛すぎる・・・! この負傷した左腕で、全身を支えきれるはずがない。


 足が、体が、ぶらぶらと宙に揺れている。

 アニ子が私の右肩に乗って、震えている。

 目の前に、ソリューションアイ本社ビル地下一階の、2000人キャパの客席が見える。


  満員で埋め尽くされた会場には、一ヶ月前の株主総会と同じように、世界各国からたくさんの株主たちが顔を揃えて、新たに会長として任命されるはずだった私の出番を、今か今かと待っている。



 やがて、誰かが叫んだ。



「おい! いたぞ! リカ・ヒラサワ、ぶらさがってるぞ!」


 誰かが指差した先を、人々が驚いて見上げ、立ち上がり、声を上げた。



「何やってるんだ! 一体なんのまねだ!」


「ふざけてるのか! 何のつもりだ!」


 ただ照明器具の間からぶら下がっているしかない私に、株主たちが非難の声を浴びせかける。とにかくそんなこと言う前に、私を助けてくれ~!


 私を見上げているであろう、ドクターコフィンが叫んだ。


「リカ! しっかりつかまってろ! すぐ助けを呼ぶ!」


 もう無理だ。傷口が開いてしまったのがわかる。生暖かい血が左肩をつたっていく。出血している血管が爆発してちぎれそうだ。下に落ちてしまう。


 私はとっさに、いつものように、心の中でリュウの名前を叫んだ、


 リュウ、お願い助けて・・・!


 死んじゃう、4メートル下の舞台に落っこちて死んじゃう!


 株主の目の前で、無様な死に様を見せてしまう。


 ソリューションアイを救わなくてはならないの。私がやらなくてはいけないのに・・・!


「リュウ、助けて、助けてよー!」


 私はこらえきれなくなって、泣きながらそう叫んだ。


 そのとき。誰かが私に、こう叫び返した。


「平沢里香! 忘れるな! お前はソリューションアイ創始者・早瀬隆二が八年もの間、愛して愛して愛しぬいた唯一の後継者だ! 俺の顔に泥を塗るようなことをしたら、ただじゃおかないからな!」


 リュウだ。リュウの声が聞こえる。


 そうだ。しっかりしなくては! ソリューションアイの未来が、私にかかっている。


 こんな大切な日に舞台上から落下なんて、そんな失態を見せたらリュウの顔に泥を塗ってしまう!


 恐怖で閉じていた瞳を、かっと見開いた。


 私はとっさに、鉄骨の上を見上げた。ソリューションアイの警備員たちが集まり、へっぴり腰で梁の上を渡り、私を助けにこようとしている。



 下を見下ろす。ドクターコフィン、ジミー、そして佐々木君が、あたふたと私を見上げている。




 数メートル先にの真下に、マイクが設置されたスピーチ台があった。



 しっかりしろ。私は平沢里香。


 元はぁとふる訪問看護ステーション社長の、平沢里香。


 元アフリカ計画救急医療チームリーダーの、平沢里香。









 そして。


 ソリューションアイ創設者で会長であった世界一の経営者・早瀬隆二から、8年もの間寵愛を受け、怒鳴られ、厳しく育てられた、世界でたった一人の後継者、平沢里香なのだ。



 負けない。


 絶対、負けない・・・!



 私は左肩にはびこる激痛をこらえ、右手にしっかりとアニ子を抱き、左手をゆっくりゆっくりと前へ、前へと動かしていった。体がそのたびにゆれ、左肩に激痛が走る。

 冷や汗が背中をじっとりと濡らし、私の体を支える左手も汗でぬれていく。

 お願い。滑らないで。なんとかスピーチ台のところまで、たどり着くのだ!


 株主たちや舞台上の関係者たちが、あわわしながら、全身をぶらぶらさせて鉄骨を左手 だけでつたっていく私を、見つめている。


 スピーチ台の真上までたどり着いた! あとは飛び降りるだけ。

 行くぞ、平沢里香! 大丈夫、私ならできる、私なら・・・!

 思い切って、鉄骨を掴んでいた左手を、ぱっと離し、解放させた。










「ああー! 落ちたぞー!」
# by eri_yoshikawa | 2008-12-24 09:11 | #010~5 | Comments(0)

#010~4 新生ソリューションアイ誕生! 永遠のわかれ


 私は仲間たちを後ろに引き連れ、ソリューションアイ地下大ホールの壇上へ向かい、袖口を歩き始めた。



 ふと、廊下の片隅で、その舞台裏の廊下とは不釣合いのアンティーク調の豪華な椅子に座る一人の老人の姿が目に入った。傍らには顔の長い中年女性が背筋を伸ばし立っている。


 老人はこんな薄暗い廊下で、まぶしいはずもないのに黒いサングラスをかけている。そしてその奥の瞳から、じっと私を見つめている。



 シミとほくろだらけの顔だが、恰幅がよく、肌がつやつやしている。真っ白になった頭はきれいにオールバックにセットされており、同じように真っ白に決めたスーツの下から、派手な原色のハイビスカスが並んだアロハシャツが見え隠れする。豪華な特注らしい杖の上に両手を乗せ、更にその上に顎を乗せ、吟味するように私をじっと見つめている。




 どこからどう見ても、マフィアのボスのようだった。一体誰なんだ・・・。


 私は思わず歩を緩め、老人の前で足を止めた。ジミーが慌てて、私に耳打ちした。


「会長の、ミスターリュウジ・ハヤセのお父様です」


 えっ!


 この人が? このマフィアのボスみたいな格好した、この人が?

 あのリュウの、お父さん!?

 老人は私の反応を見透かしたように、かすれた声でウォホッホと笑ってみせた。

「これっ。愛人め。これが早瀬隆二の父親か、マフィアのボスじゃないのかとでも思っておるのだろう!」

 私は戸惑い、返事ができず、ジミーに助けを求めた。

「ミスター・リュウゾウ・ハヤセ。お久しぶりです」

 ジミーが深く頭を下げた。

「何がお久しぶりだバカモノ!」

 突然、リュウのお父さんはジミーに怒鳴り、杖の先でジミーの頭をかつんと殴った。

「私の大切な嫁を手玉にとりやがって! わしがどれだけ、ミキちゃんから介護されるのを楽しみにしておったと思っておるんだ!」

ジミーが戸惑い、苦笑いを浮かべて私の背中を押した。

「か、介護なら、リカの方がプロですよ」

「わしはおっぱいが大きいほうがいいんだ!」

 何っ。私はリュウの父親とわかっていながらも、にらみつけずにはいられなかった。

 老人が私の顔を見て、またウォッホッホと笑う。

「気の強い顔をしておるな。さすが、わしの一人息子が骨抜きにされるわけだ」

「骨抜きだなんて、そんな・・・!」

 反論しようとして、そして私は黙った。唇をかみ締め、頭を下げる。

「あの、このたびは息子さんが・・・リュウジさんが・・・」

 老人は黙って、私を見つめている。私はおそるおそる顔を上げて、老人を見た。老人は相
変わらず杖の上に顎をのせ、おもしろそうに私を見ている。


 彼は一人息子が死んだというのに、なぜこんなにひょうひょうとしていられるのだろう。



 辛くないのだろうか。



 悲しくないのだろうか。



「お嬢さんよ」



 老人が、33歳の私に向かって言った。


「息子が産み、育てた会社だ。頼んだぞ」

 私はその言葉を重く受け止めた。

 深い吐息と一緒にうなるように「はい」と返事をしてみせる。


 老人がよっこらせと立ち上がった。リュウが言った通り、顔の長い家政婦が、老人を支え、傍らに立つ。


 さすが、息子が190センチを超えるだけある。この老人も、83歳という年齢とは思えないほど、背が高かった。180センチはあるだろう。


 老人はにっこりとほほえみ160センチに満たない小さな私を見下ろすと、私の頭の上にぼかっと大きな手を置いた。

 重くて重くて、頭がおしつぶされるかと思った。


 髪の毛をつたい、頭皮をつたい、その老人の大きな手の感触が心に伝わってくる。


 大きくて、あたたかくて、ふわふわしている。

 リュウと同じだ。リュウと同じ手をしている・・・。

 涙があふれそうになるのを、必死にこらえた。


「主人はいずれ、戻る。それまで耐えなさい。耐えてソリューションアイを、守りぬけ」


 ・・・え?

 主人はいずれ、戻る・・・?


 聞き返そうとした私を妨げるように、老人は「そうだ」とつぶやき、彼に付き添っていた家政婦を振り返った。


「息子に頼まれて、預かっていたものがある。君に返さなくてはな」


 老人に言われて、家政婦は無表情のまま、足元に置かれた段ボール箱の元にしゃがんだ。


 そしてダンボール箱を開けた。


 中からひょい、と顔を出したのは、フェレットのアニ子だった。


 思わず顔がほころび、アニ子を抱き上げようとしたその瞬間・・・!


 アニ子は長い間段ボールに入れられ、警戒心を強めていたようだ。シャー! と威嚇の声をあげると、あっという間に私の足をすり抜け、薄暗い廊下を走り出した!



「こら! 待て! 待ちなさい!」


 慌てて追いかける。

「リカ、フェレットは後にして! もうすぐ演説が始まりますよ!」


 ジミーが叫んだ。


「だめよ! アニ子が怪我でもしたら大変! 大丈夫すぐ戻る!」


 私は慌てて、すばしっこく走るアニ子を追いかけた。アニ子は細長い廊下を、まっすぐにピューと走っていき、音響室へと続く鉄骨の階段をぴょんぴょんと駆け上がっていく。


「待ちなさい!」


 音響室にいた中国人が、不思議そうに、珍妙なフェレットという動物と、今日の臨時株主総会の目玉である私の追いかけっこを見つめている。


「お願い! その子捕まえて!」


 アニ子は開け放たれた音響室に入って行こうとしたが、中国人は初めて見るであろう珍獣を見つめ、「アイヤー!」と叫んで恐れて、扉を閉めてしまった。


「バカ! 役立たず! こんなちっちゃい動物恐れてどうすんのよ!」


 アニ子は戸惑い、扉の前をいったりきたりしている。今だ! 


 アニ子に飛び掛ったが、彼女はくるりと方向転換をし、さらに上へと続く鉄骨の階段をあがっていく。飛び掛った私はそのまま、閉ざされた扉に激突した!

 全く! これからソリューションアイ存亡をかけた演説だというのに、たんこぶが!

 私は意地になって、興奮してすばしっこく逃げていくアニ子を追いかけ続けた。

 鉄骨の階段を上がりきったところで、無意識に先を急ごうとする私の足を、とっさに脳が命令を下して止めさせた。



 これは・・・まずい。



 私もアニ子も、舞台の最上に上り詰めていた。舞台の上を、縦に10本ほどの鉄骨がまっすぐ下手側に伸びている。そしてその鉄骨に絡みつく、壇上を照らす照明器具たち。


 鉄骨でできた梁の幅は十センチほどしかない。その隙間から、スポットライトを浴びて、ソリューションアイの未来を語る、ドクターコフィンの頭が見えた。


 アニ子の姿を探す。彼女は真ん中の鉄骨の上を、とっとことお尻を揺らして歩いている。


 その鉄骨の下から舞台の壇上まで、高さは4メートルほどだろうか。アニ子はそこが空中であることに、全く気がついていない。


「アニ子、こっちへ来なさい!」
 声をこらして、必死にその珍獣に問いかける。


 アニ子は私の声に振り返ると、困った顔を浮かべ、その場に座りこんだ。


「今から行くからね、そこでじっとしてるのよ!」


 幅十センチの鉄骨の梁に、足を乗せた。


 怖い! 下を見るな! 足がすくむ。震えている。でも、早くアニ子を助けてあげないと。4メートル下に落下したら大変なことになる。しかも現在、会場は会社の行く末を担う大切な臨時株主総会の真っ最中なのだ。


 一歩、また一歩と、両手でバランスを取りながら、アニ子に近づいていく。


 アニ子は私が飼い主であることをすっかり忘れてしまったようで、私の気配に気がつくとまた起き上がり、シャー! と威嚇する。


「大丈夫、あなたを助けるために来たのよ、シーっ!」


アニ子が不安定にお尻を揺らせながら、のそりのそりと後ずさりしていく。その片方の足が梁から外れ、アニ子はバランスを崩した。







「危ない!」
# by eri_yoshikawa | 2008-12-22 09:00 | #010~4 | Comments(0)
■ 平沢里香
正義感が強くてがんばり屋の30歳。
前作『結婚38』では、企業買収、拉致、看護師資格剥奪・・・と怒涛の日々を送るがへこたれないスーパーパワフルな女性。 現在は、医者になることを夢見てハーバード大学の医学部へ進学を決意!

■ 早瀬隆二(リュウ)
世界5カ国に支社を持つ企業ソリューションアイの会長兼CEOという敏腕イケメン経営者。39歳。5年前里香と出会い不倫関係に。
吉川英梨(よしかわえり)

1977年9月6日生まれ。
大妻女子大学短期大学部日本文学科卒業。

出版社勤務の傍ら、シナリオセンターにて脚本のノウハウを学び、テレビ・映画等の企画に参加。

現在、特定非営利活動法人NICE(国際ワークキャンプセン ター)中長期ボランティア運営員会副委員長。米テンプル大学日本校教養学部政治学科在籍中。


[連載小説]
*毎週月~金曜日連載*
東村アキコ(ひがしむらあきこ)
HIGASHIMURA Production
漫画家
1975年生まれ 宮崎県出身
1999年集英社「ぶーけ」でデビュー

■ 現在の連載作品
週刊モーニング
「ひまわりっ~健一レジェンド」(講談社)
月刊クッキー
「きせかえユカちゃん」(集英社)
月刊コーラス
「ママはテンパリスト」(集英社)


第3回日本ラブストーリー大賞・エンタテインメント特別賞受賞作。
エール大学を卒業したエリート看護師・平沢里香は、以前、よくあたると評判の占い師に「29歳で結婚する」と預言され、そのキーワードは「38」だと言われる。そして29歳になった彼女の周りに、次々と「38」に関する男たちが現れる。不倫の恋を続けているIT企業の社長・リュウを筆頭に、元彼の鬼太郎、支店長候補に応募してきた佐々木君、母親の韓国語の教師・スンジェなどなど。果てはイケメンたちとの恋にとどまらず、リュウのIT企業の買収合戦に巻き込まれ、敵企業のスパイに拉致されてしまう里香。果たして里香の運命は? そして結婚の預言の行方は……!?
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お待たせしました! 『私の予言シリーズ』第二弾、いよいよ連載開始です!
by eri_yoshikawa